聖地の賑わい
チベットの中心であるラサにて。 バルコルと呼ばれる路地を歩いていると、時折、巡礼者を踏みそうになる。
寝転んでいるのは「五体投地」。立った状態から手を上にして合掌、喉あたりで合掌、胸元で合掌、スライディングのようにズザーっと滑り込み寝転んで合掌、起き上がる。この繰り返しで少しずつ進みながら巡礼し、参拝している。
ここはいつも、巡礼者で賑わっている。 浅草寺や清水寺のような混んでいる所を歩いていて、急に参拝客が寝転び始めたら、その人をうっかり踏みそうになるだろう。ちょうどそんな感じ。
チベット仏教といえば、果てしない荒野の道を、孤独に五体投地で進んでゆくのがメディアで見るイメージかもしれない。それには続きがある。
ラサは巡礼の目的地である聖地。辿り着いた孤独な(?)巡礼者が大勢いて、ワイワイごった返している。あちこちで熱心に五体投地して、場所によっては踏んでしまいそうなる。 ラサの中心には不思議な賑やかさと活気が満ちている。
慣れると、五体投地の巡礼者、観光客、物売り、人混みを自然にかわして歩けるようになる。聖と俗が混じりあうこの通りをいい塩梅で歩けると、この流れが心地よくなる。
夜中、お寺の前を通ると、お寺の外でまだ参拝している人々がいる。
しばらく見ていたが、月と街頭に照らされてずーっとやっていた。
氷点下になる真冬でもそう。
ゴミが落ちてようが、汚れたマットが散らかってようが、ここが正真正銘、本物の聖地であることを巡礼者たちを見て思い至る。
この賑わいを見つめていると、飽きることがない。